2010年9月15日 星期三

「慢々来」 秋山孝

ポスターの魅力は、一枚のほどよい大きさの紙に印刷され、人間にとって必要なメッセージを芸術表現でビジュアルコミュニケーションするところにある。テレビやインターネットのような時間を占有する映像的なものでなく、さらに電気エネルギーも必要ない。一枚の紙に印刷され、静かにいつでも見られ、深く想像でき、象徴的であり、記念的で時代を語り、絵画でもなく版画でもない。人の心に土足であがるような下品さもなく、持運びは簡単で機能的だ。
ぼくは、このポスターの魅力にとりつかれてしまった。思えば15、16歳の多感な頃にその美的魅力に心が動いたのだ。それ以来、ずっと制作し続けている。
それからぼくの心を捕らえた表現は、写真ではなくイラストレーションだった。人間の手で描かれた主観的な心の声が、響きわたるものでなければならなかった。それは、ぼくのユーモア感覚が十分に発揮でき、言葉では伝えにくい問題などをやさしく語る軽さがあった。大きな叫びではなく、ちょっとしたタイミングで自分の感覚の声で歌いたかった。イラストレーションのもっている軽快でリズミカルな現代性が合っていた。さまざまな仕事や創作を行ってきて、現在では多摩美術大学でイラストレーション研究を立ち上げることに結びついたのだと思う。終わりなくイラストレーションポスターに夢中なのである。
上海応用技術学院の客座教授でたびたび上海を訪れるようになって、中国の魅力にひかれるようになった。とくに美術の分野では、日本の芸術文化が計り知れないほど影響を受けていることを実感した。
そんな中で、せっかちで、あわてもので気の短いぼくが見つけた大好きなことばに「慢々来」がある。人にアドバイスするときにこのことばは、とても豊かな気持ちにしてくれるし、勇気を与えてくれる。さしずめ日本人なら「頑張れ」といったところだが、そういう意味ではなく、挫折しそうなときには逆に「ゆっくりやろう」と「急ぐなかれ」といった意味で心にグッとくる。ぼくは、すぐ近くの店で「慢々来」の印鑑を彫ってもらった。忘れないようにぼくの心にも深く彫り込んだ。(本書まえがきより)

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